令和7年7月の一陸技の試験の無線工学AのA-11~15の問題について解説します。
R.7.7 無線工学A A-11

出典:公益財団法人 日本無線協会 第一級陸上無線技術士 R7年7月 無線工学A A-11
無停電電源装置(UPS)に関して誤った選択肢を選ぶ問題です。
この問題は同様の問題が令和6年1月A-8や令和4年7月1回目A-10で出題されています。
過去問ではUPS一般に関しての問題となっていますが、今回は常時インバータ方式に絞られています。
下記の記事も参考にしてください。
令和6年1月A-8

令和4年7月1回目A-10

誤った選択肢は2です。
常時インバータ方式は常にインバータを経由して負荷に電力を供給する方式です。 この方式では商用の交流電力も一度直流に直して負荷に電力を供給するので、停電時も復電時も無瞬断で切り替えることができます。
R.7.7 無線工学A A-12

出典:公益財団法人 日本無線協会 第一級陸上無線技術士 R7年7月 無線工学A A-12
無線中継回線の回線設計に関する問題です。
A
Aは与えられている式に与えられている値を代入するだけです。
$Pir$の計算に使う$D$は全伝送区間で中継区間が3区間ですべて距離が$d$なので$D=3d$です。 計算すると \[ Fmr=10\log \frac{k\times PR}{Pir \times d} \\ =10 \log \frac{2\times 0.00837}{5 \times 10^{-5}\frac{d}{3d}} \\ =10 \log \frac{6 \times 8.37 \times 10^{-3}}{5\times 10^{-5}} \\ =10\log \frac{50.22 \times 10^2}{5} \simeq 30 \] なのでAには「$30$」が入ります。
B
設計値の表が与えられているのでレベルダイヤを考えながら送信電力から順番に足しあげていけば$Pr$を計算できます。 \[ Pr=30-8+42-143+42-8 \\ =-45\rm{[dBm]} \]
この計算からBには「$-45$」が入ります。
C
熱雑音に対する$C/N_{th0}$が与えられているので分母の$N_{th0}$を熱雑音として計算します。 \[ N_{th0}=10\log kTBF=-228.6+24.6+10\log(9.5\times 10^{6})+4 \\ =-228.6+24.6+9.8+60+4=-130.2\rm{[dBW]}=-100.2\rm{[dBm]} \]
この結果からマージンなしの時の電力を計算すると \[ C=23.2-100.2=-77\rm{[dBm]} \] となり、この結果から \[ Fm=Pr-C=32\rm{[dB]} \] で、Cには「$32$」が入ります。
以上から答えは3です。
R.7.7 無線工学A A-13

出典:公益財団法人 日本無線協会 第一級陸上無線技術士 R7年7月 無線工学A A-13
デジタル変復調における波形形成の基本原理に関する問題です。
A
ナイキストの第一基準を満たすことで符号間干渉をなくして伝送することができます。
そのため、Aには「符号間干渉」が入ります。
B~D
$t_s=0$の時整合フィルタの条件を満たすためには \[ M(j\omega )=H^*(j\omega ) \] であり、通信路全体の特性が$X(2\pi f)$になる必要があるので \[ H(j\omega )M(j\omega )=X(2\pi f)\\ |H(j\omega)|^2=X(2\pi f) \] となります。
これを満たすB,Cの組み合わせは \[ H(j\omega )=\sqrt{X(2\pi f)} \\ M(j\omega )=\sqrt{X(2\pi f)} \] となります。
上記から送受信とも同じルートコサインロールオフ特性となるのでDには「送受信ともに」が入ります。
以上から答えは3です。
R.7.7 無線工学A A-14

出典:公益財団法人 日本無線協会 第一級陸上無線技術士 R7年7月 無線工学A A-14
MIMOシステムでの信号分離の原理に関する問題です。
この問題は同様の問題は令和4年1月1回目A-16で出題されています。 Aで求めるものが異なっています。
解き方については下記の記事をご参照ください。

Aに関しては$w_{s2,1}$を求めることになっていますが、上記の記事での行列の違う要素盛ってこれば大丈夫です。
答えは
- A:$-\frac{h_{21}}{h_{11}h_{22}-h_{12}h_{21}}$
- B:雑音強調
で2です。
R.7.7 無線工学A A-15

出典:公益財団法人 日本無線協会 第一級陸上無線技術士 R7年7月 無線工学A A-15
固定形マイクロ波帯デジタル無線伝送方式のC/N配分に関する問題です。
この問題は同様の問題が令和5年1月1回目A-15で出題されています。
下記の記事をご参照ください。

値が違うので計算しましょう。
A
所要$C/N$は理論$C/N$より固定劣化分大きくないといけないので \[ C/N=21.3+5=26.3\rm{[dB]} \]
B
歪み雑音の$C/N$は所要$C/N$の2%なので \[ 歪み雑音C/N=26.3-10\log 0.02 \\ =26.3+17=43.3\rm{[dB]} \] です。
C
Bと同様に考えて \[ 干渉雑音C/N26.3-10\log 0.54 \\ =26.3+2.6=28.9\rm{[dB]} \]
以上から答えは5です。
まとめ
令和7年7月の無線工学Aの試験A-11~A-15の問題について解説しました。 今回の範囲には新傾向の問題が2問出題されていました。 問題自体はそれほど難しくないので落ち着いて考えましょう。
参考文献
電磁気学をちゃんと学びたい人向け
上の難易度が高い人


コメント