令和3年7月の1陸技の試験、無線工学AのA-16~20の問題について解説します。
R.3.7 無線工学A(1回目) A-16
TDMAの方式に関する問題です。 基本的な用語の問題なのでTDMAの方式の理解と一緒に覚えておきましょう。
A
TDMAのフレームは一定時間幅で分割しています。 そのため、Anには一定が入ります。
B
地球局はバーストと呼ばれる信号をスロットの時間内に収めて送出します。
そのため、Bにはバーストが入ります。
C
各地球局が異なる時間に電波を送出するので混変調の問題がなくなります。
そのため、Cには混変調が入ります。
以上から答えは4です。
R.3.7 無線工学A(1回目) A-17
デジタル無線方式のフェージング補償技術に関する問題です。 この問題は明らかに誤っている記述がありますが、分からなければ消去法で解きましょう。
この問題の答えは4です。
4の選択肢ではダイバーシティ方式では複数の位置や周波数で冗長化することでフェージングの影響を小さくしています。 同時に品質が劣化する通信系を使っても意味がありません。
R.3.7 無線工学A(1回目) A-18
二重積分方式のA-D変換の原理に関する問題です。
原理的には入力電圧$E_i$と基準電圧$E_r$を積分回路に入力した時の出力時間を比較して入力電圧を測定します。
A
時刻$t_1$での出力電圧は \[ V_O=-\frac{1}{RC}\int v(t)dt=\frac{E_it_1}{RC} \] となります。 時刻$t_1$でSWを切り替えると符号が逆なので \[ V_O=\frac{1}{RC}\int v(t)dt=\frac{E_r(t_2-t_1)}{RC} \] が等しくなります。 1パルス当たりの時間を$t_c$とすると$t_1=t_cN_1$、$t_2-t_1=t_cN_2$なので \[ E_i=E_rN_2/N_1 \] となります。
そのため、Aに入るのは$E_i=E_rN_2/N_1$です。
B
上の計算から分かるように計算結果にRやCが消えています。 すなわち、コンデンサCや抵抗Rの精度に依存しないことになります。
そのため、Bには「しない」が入ります。
C
周期性の雑音が入力に加わった場合、その周期の整数倍すれば測定時刻によらず決まった値が積分回路の出力に現れます。 これは周期関数を1周期積分したとき、区間によらず一定になるためです。
この積分結果は入力電圧と基準電圧を入力した時、両方符号が逆で出力されるので打ち消すことができます。
そのため、Cには「整数倍」が入ります。
以上から答えは4です。
R.3.7 無線工学A(1回目) A-19
オシロスコープとスペクトラムアナライザに関する問題です。 オシロスコープは時間軸での入力信号の波形をスペクトラムアナライザは周波数軸での入力信号の波形を測定することを念頭に置くと良いでしょう。 分からなければ消去法で解きましょう。
この問題の答えは5です。
オシロスコープで複数の正弦波を入力するとその重ね合わせの形で測定されます。 この時、2つの正弦波を区別できないため相対位相を測定することはできません。
R.3.7 無線工学A(1回目) A-20
微分回路の性質に関する問題です。
A
微分回路の出力は$e^{-\frac{t}{\tau}}$に比例します。
$\tau$は時定数です。時刻$t$に$\tau$を代入すると$1/e$になります。
B
低域遮断周波数は電力が1/2になる周波数です。 電力が1/2なので電圧は$1\sqrt{2}$となります。 $1/\sqrt{2}$は振幅が-3dBと同じ意味なのでBには-3dBが入ります。
C
低域遮断周波数は$f_1=1/(2\pi \tau)$となります。
以上から答えは3です。
まとめ
今回は先日行われた令和3年7月1回目の1陸技の無線工学AのA-16~20を解いてみました。 過去問が多く出題される1陸技の試験ですが、ここ最近は1回の試験で2回分の過去問が出るので過去問もはかどりますね。 次の試験を目指すならこの時期からであれば次の試験まで十分に時間が取れます。 1陸技を目指す方は頑張っていきましょう。
参考文献
電磁気学をちゃんと学びたい人向け
上の難易度が高い人
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