一陸技の試験申し込みが終わったころですが、私はGWに自宅で鋳造できる金属の錫で遊んでいました。
というのも遊びに行った同人誌即売会で錫鋳造に関する同人誌を買って面白かったので自分でやってみた次第です。
筆者の方のリンクを下記に貼っておきます。
今回は番外編で錫の鋳造に関して覚書をまとめます。
鋳造とは
溶かした金属を型に流し込み、冷やして固めることで目的の形状を得る金属加工法です。
金属をたたいて成型する鍛造などの方法もあります。
鋳造では一般的には鉄やアルミなどが使われます。
そして、家電製品の部品やフライパンなどの調理器具といった様々な製品がこの手法で作られています。
金属を溶かして固めるという性質から形状の自由度が高く、安く大量に作ることができることが特徴です。
鋳造は主に
- 型の準備
- 金属を溶かす
- 溶けた金属を型に流す
- 金属が冷えて固まるのを待つ
- 固まった金属を取り出す
という工程があります。
ここで扱う錫に関してはご家庭のガスコンロで溶かすことができるので最初の型を準備する工程で手軽さが大きく変わります。
鋳造の型には砂型、石膏型、シリコン型、金型などいろいろな方法があります。
錫に関しては融点が低いのでシリコン型による鋳造が可能です。
砂型や石膏型はより融点の高い金属では必要な技術ですが、手軽さ、量産性の観点からここではシリコン型の鋳造をご紹介します。
融点が低いといっても232℃は十分高温なので、やってみる際は火傷や火事には注意してやってみてください。
錫とは
錫が原子番号50の金属で元素記号はSnです。
融点が232℃と低いため、ご家庭のガスコンロでも溶かすことができます。
また、手で曲げられるほど柔らかく展延性の高い金属です。
変形させると双晶構造の変形によりスズ鳴きという独特の音が鳴り結構気持ちいいです。
錫は融点が低いので人類とのかかわりは深く、単体だけでなく銅との合金である青銅として使われてきました。
また、錫は毒性が低いことから酒器などとしても広く使用されています。
錫器という伝統工芸品の名前を聞いたことがあるかもしれません。
このようなおしゃれな食器を自分で作るのも面白いです。
厳密には毒性がないわけではなく、粉末の錫を吸い続けることで肺が侵される錫肺症や有機化合物としての錫には高い毒性があります。
錫鋳造に必要な道具
錫の鋳造に最低限必要な道具のリストは下記のとおりです。
- 錫
- 型
- ベビーパウダー&筆
- お玉
- 軍手
- ガスコンロ
各道具について詳しくは後述します。
コスト感としては錫は100gで1000円くらいで購入でき、ガスコンロはピンキリですがキッチンにあると思います。
型はどれくらい凝るかにもよりますが、市販のシリコン型を使うなら100円~2,000円程度です。
それ以外の道具は100円ショップやスーパーなどで買えるので多めに見積もっても2,500円くらいあれば最低限は遊べます。
あると便利なもの
- ステンレスバット
- クランプ/クリップ
- ステンレス鍋
- 割りばし
- ピンセット
ステンレス鍋は1,500円くらいでそれ以外は100円ショップで買えます。
100円ショップにアルミ鍋がありますが、アルミ鍋は高温にすると穴が開くことがあるのでここをけちるのはやめましょう。
錫
鋳造する材料として錫が必要です。
購入方法としてはインターネットで買えます。
ティンアロイさんでは100g1,000円や300g2,500円のお試しパックがありますのでそれを購入してみるのがよいでしょう。
たくさん買うときはボールやチップのものが溶けやすくていいでしょう。
チップの方が若干安いようです。
型
型については既製品で済ませることもできれば原型から作ってシリコン型を作ることもできます。
手軽に始めるなら100円ショップのお菓子用のシリコン型やレジン用のシリコン型が使えます。
耐熱温度が記載されているものは230℃くらいが多いです。
レジン用のシリコン型は耐熱温度が書いてないことがありますが、一応使えました。
液体の錫は232℃を超えるため許容温度外で使用することになるのであくまで自己責任でお願いします。
こういうのが手軽でよいでしょう。
ベビーパウダー&筆
錫の表面張力を小さくし、錫の流れをよくするために使います。
基本的には溶けない細かい粉であればよくタルクなどでもよいようです。
私はシッカロールを使っています。
筆はベビーパウダーを型に付けるために使います。化粧品用の適当なものを買えばOKです。
https://jp.daisonet.com/collections/cosmetics0203/products/4549131995770
お玉
お玉は錫を乗せて直接あぶることで錫を溶かすのに使います。
ステンレス製のものであれば問題ないです。
先が細く注ぎやすくなっているタイプだとより使いやすいと思います。
https://jp.daisonet.com/products/4994163289753?_pos=15&_sid=fc08fd8b6&_ss=r
軍手
100円ショップに売っているような普通の軍手で問題ありません。
熱いものに触れると溶ける可能性があるので、滑り止めのゴム付きやゴム製の軍手はやめた方が無難です。(試したことないですがそこのリスクを取る必要はない)
ガスコンロ
キッチンにあるガスコンロで大丈夫です。IH等でない場合やキッチンを使いたくない場合はカセットコンロでも大丈夫です。
溶けた錫がガスボンベにかかると破裂するかもしれないのでガスボンベが露出していないものにした方がいいと思われます。
ここまではないと鋳造できないものです。
ここからはあると便利だったものをご紹介します。
ステンレスバット
型から錫がたれてしまったときやベビーパウダーを型に付ける時に下に引くものがあると便利です。
ステンレス製のバットであれば100円ショップでも購入できるので用意しておくといいでしょう。
クランプ
型を固定するのに使います。
ねじで固定するタイプの方が大きな方に使えますが、クリップのようにはさむだけのタイプの方が取り回しが楽です。
https://jp.daisonet.com/collections/tools0102/products/4549131301786
https://jp.daisonet.com/collections/tools0102/products/4549131181654
割りばし
何度か鋳造しているとベビーパウダーの残りかすなどの不純物が表面に浮くことがあります。
割りばしで液体錫の表面をなでるようにどけてあげると先に錫だけを流し込めるので不純物を取り除くことができます。
ピンセット
鋳造して固まった錫を取り出すときに使います。
冷めるのに時間がかかることがあるのでピンセットなどで取り出すと安全です。
自宅で鋳造-お手軽編-
もっとも簡単なに鋳造を始めるなら100円ショップの調理用シリコン型がいいでしょう。
片面だけある型に流し込むだけなので裏側は平らなものができます。
細かい模様はかなり再現度よく作ることができますが、型自体が薄いのか数回錫を流すと小さな穴が開くことがありました。
実際に作ったものは下記です。
猫の形の型を使ってみました。
自宅で鋳造-シリコンシート編-
シリコンシートや厚紙で型を作って、板ではさむことで空いた空間を型として使う方法です。
シリコンシートをデザインナイフやカッターで切ってほしい形を作ります。
それを2枚の板ではさみ出来た隙間に錫を流して鋳造します。
私は木材の板を使ってレジン用のシリコンシートで形を作って使用しています。
厚みを変えるために厚紙などを使うこともあります。
写真のようなシリコンシートと木の板を使います。
この写真では直径9cmの円形の型になります。
シリコンシート上側の切込みが湯口と呼ばれる錫を注ぐ部分、横の溝は空気の逃げ道として開けています。
小さいものならあまり気にしなくてもいいですが、大きいものには空気穴が必要です。
この写真のように組み合わせて、上側にある穴に錫を注ぎます。
出来上がりは下の写真のようになります。
木の板ではさんでいるので木目になっていますが、半紙などを間に挟むとつるつるのものも作れます。
シリコンシートはダイソーのUVレジン用マットを使っています。
サイズ感も13×13cmあり、使いやすいです。
この方法は小さく単純なものが作りやすいので、いくつか錫代の足しにするために販売することにしました。
今後も追加していきますので、興味があれば見てみてください。
シリコン型による鋳造
最後にシリコンで型を取る鋳造をご紹介します。
原型を用意して、シリコンで型を取る方法です。
私も詳しくはないので詳しい型取りのやり方はレジン用のシリコン型の取り方を調べてみてください。
型取り剤としては耐熱性の観点から旭化成ワッカ―のM4470を使うことです。
実際に作ってみたものとしては、フタゴムシをモチーフにした原型で錫製フタゴムシを作ったりコップを作ったりしました。
シリコンはここまでで紹介してきたものと比べて値段や技術の高いのでハードルが高いですが、より複雑なものを作ることができるようになります。
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