令和4年1月の1陸技の試験2回目の無線工学BのA-1~5の問題について解説します。
R.4.1 無線工学B(2回目) A-1

出典:公益財団法人 日本無線協会 第一級陸上無線技術士 R4年1月2回目 無線工学B A-1
例年A-1はマクスウェル方程式に関する問題がよく出題されています。
2回試験するようになってからは2回ともマクスウェル方程式ではないこともありましたが、1月は例年通りマクスウェル方程式の問題が出題されました。
1回目は波動方程式の問題でしたが、今回は用語の問題です。
A
右辺に電界または磁界の時間微分が入った式なので①がアンペアの法則、②がファラデーの法則と分かります。
これらの式の左辺は磁界と電界それぞれの回転($\nabla \times$)となります。
そのため、Aには「$\nabla \times$」が入ります。
以上からAには「$\nabla \times$」が入ります。
B
Aの説明の通りで①はアンペアの法則なので、Bには「アンペア」が入ります。
C
①の第3項は変位電流と呼ばれる項です。
そのため、Cには「変位電流」が入ります。
D
Aの説明の通りで②はファラデーの法則なので、Dには「ファラデー」が入ります。
以上から答えは4です。
R.4.1 無線工学B(2回目) A-2

出典:公益財団法人 日本無線協会 第一級陸上無線技術士 R4年1月2回目 無線工学B A-2
線状アンテナの指向性に関する問題です。
A
線状アンテナの指向性は線状アンテナからの角度$\theta$の依存する指向性関数には比例しますが、距離には無関係です。
放射される電波が距離により減衰するのは事実ですが、指向性とは関係ありません。
そのため、Aには「関係しない」が入ります。
B
ダイポールアンテナの指向性が8の字型であることを覚えていれば底から考えましょう。
$\theta =\pi/2$が最大放射方向なのでそうなる関数を選びます。
そのため、Bには「$\sin \theta$」が入ります。
C
半波長ダイポールアンテナの指向性関数の表式を選ぶです。
こちらも、式自体を覚えている必要はなく、$\theta =\pi/2$で最大となる関数を選びましょう。
分母は$\theta =\pi/2$で1なので、$\cos$が1となれば良いことになります。
そのため、Cには「$\frac{\cos\left(\frac{\pi}{2}\cos \theta\right)}{\sin \theta}$」が入ります。
以上から答えは3です。
R.4.1 無線工学B(2回目) A-3

出典:公益財団法人 日本無線協会 第一級陸上無線技術士 R4年1月2回目 無線工学B A-3
直線状アンテナの放射抵抗を求める問題です。
与えられた式が使えるように直線状アンテナを微小ダイポールアンテナとみなすことにします。
周波数30[MHz]($\lambda =10\rm{[m]}$)に対して実効長2[m]なので大きな逸脱はないと思っていいでしょう。
放射抵抗を$R$として、放射電力$P$は次のように表せます。
\[
P=RI^2
\]
そのため、Rは
\[
R=P/I^2=80\left(\frac{\pi l}{\lambda}\right)^2=80\times \left(\frac{\pi \times 2}{10}\right)^2=31.6[\rm{\Omega}]
\]
となります。
以上から答えは1です。
R.4.1 無線工学B(2回目) A-4

出典:公益財団法人 日本無線協会 第一級陸上無線技術士 R4年1月2回目 無線工学B A-4
アンテナの一般的性質に関する記述の中で誤ったものを選ぶ問題です。
この中で明らかに誤った選択肢は2です。
自由空間上でアンテナ同士を対向させた時の受信電力を求めるのに使うのはフリスの公式です。
バビネの定理は電磁界の双対性を表す定理なのでここでは使用しません。
そのため、答えは2です。
R.4.1 無線工学B(2回目) A-5

出典:公益財団法人 日本無線協会 第一級陸上無線技術士 R4年1月2回目 無線工学B A-5
半波長ダイポールアンテナのインピーダンスを純抵抗にするための条件を求める問題です。
この問題に関して言えば邪道な方法でも解くことができますが、まずは真っ当な方法で解いてみましょう。
真っ当な方法では短縮率を求めてから、波長に対してその値をかけることで求める方法です。
短縮率$\delta$はアンテナのインピーダンス$Z_0$を使って、
\[
\delta=\frac{42.55}{\pi Z_0}
\]
と求められます。
半波長ダイポールアンテナの入力インピーダンスは単線式伝送路の特性インピーダンスなので、
\[
Z_0=138\log_{10} \frac{2L}{d}=138\log_{10}\frac{5}{5\times 10^{-3}}=414
\]
ここで、$L$はダイポールアンテナの片方の素子の長さ$L=2.5[\rm{m}]$です。
短縮率の式に代入して$\delta=0.033$なので、
\[
l=L(1-\delta)=2.42[\rm{m}]
\]
です。
そのため、答えは1です。
ここで邪道な方法も紹介しておきましょう。
一般に半波長ダイポールアンテナは半波長ではインピーダンスが虚数成分を持ち、少し短縮することで入力インピーダンスが純抵抗となります。
このことを知っていれば、答えは必ず1/4波長である2.5[m]より少し小さい値になるはずです。
その視点で選択肢を見ると1の2.42[m]しか条件に合うものがないため一発で答えは1とわかります。
同様の問題は短縮率の表式が問題文で与えられることも多く、計算も恐ろしく面倒くさいので、半波長ダイポールアンテナの性質を理解しているかを見たいという出題者の意図が読み取れます。
まとめ
今回は先日行われた令和4年1月2回目の1陸技の無線工学BのA-1~5を解いてみました。
1月分の試験もA,Bと1周して2回目の試験です。
そろそろ7月の試験を見据えて試験勉強を始めた方も多いのではないでしょうか?
本サイトもコンテンツが充実してきましたのでうまく活用していただければと思います。
参考文献
電磁気学をちゃんと学びたい人向け
上の難易度が高い人
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