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【過去問解説】令和3年7月の1陸技試験問題を解いてみた(R3.7 1回目 無線工学A A-11~A-15)

令和3年7月の1陸技の試験、無線工学AのA-11~15の問題について解説します。

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R.3.7 無線工学A(1回目) A-11

出典:公益財団法人 日本無線協会 第一級陸上無線技術士 R3年7月1回目 無線工学A A-11

GPSの測位誤差に関する問題です。

A

GPSの原理的には頭上の3つの衛星からの距離$r$と軌道情報から分かるそれぞれの衛星の位置$(x_0,y_0,z_0)$を使って自分の位置$(x,y,z)$を計算します。 具体的には \[ r=ct \\ r=\sqrt{(x_0-x)^2+(y_0-y)^2+(z_0-z)^2} \] の式です。 これを3つの衛星について立てて、3元連立方程式を解くことで自分の位置を求めています。

視線方向の誤差は$r$の誤差です。 実際の計算に使われるのはこの値なのでGPS衛星軌道誤差への影響は大きくなります。 衛星の位置$(x_0,y_0,z_0)$については軌道情報から求めるので$r$の誤差と比べて、GPS衛星軌道誤差への影響は少なくなります。

B

DOPは精度低下率なので、読んで字のごとくこの値が大きくなるほど精度が低下しているので小さい方が良好な測位精度となります。

C

マルチパスの影響はDGPSによって補正することはできません。 受信点においてマルチパスの影響を排除する必要があります。

以上から答えは5です。

R.3.7 無線工学A(1回目) A-12

出典:公益財団法人 日本無線協会 第一級陸上無線技術士 R3年7月1回目 無線工学A A-12

レーダー方程式からレーダーの最大探知距離を求める問題です。

レーダー方程式は送信した電波が物標に当たって戻ってきた電力が受信機が受信する電力と等しいという式です。 レーダー方程式は次のような形になります。

\[ S=\frac{PG\sigma}{4\pi R^2}\frac{1}{4\pi R^2}A=\frac{PG^2\lambda^2\sigma}{(4\pi)^3R^4} \]

$S$:受信電力 $P$:送信電力 $G$:アンテナ利得 $\lambda$:波長 $\sigma$:有効反射断面積 $R$:距離 $A$:アンテナ実効面積

$S=-94$[dBm] $P=100$[kW] $G=\frac{4\pi A}{\lambda^2}$ $\lambda=0.1$[m] $\sigma=\pi\rm{[m^2]}$ を代入して、$R$について解きます。

計算すると \[ R^4=\frac{PG^2\lambda^2\sigma}{(4\pi)^3S} \\ =\frac{1}{4}\times 10^{19.4} \\ \simeq (50000)^4 \] となります。 答えは2. 50[km]です。

R.3.7 無線工学A(1回目) A-13

出典:公益財団法人 日本無線協会 第一級陸上無線技術士 R3年7月1回目 無線工学A A-13

BPSKの同期検波で発生するビット誤りに関する問題です。

A

$P_0(x),P_1(x)$をそれぞれ全区間で積分すれば符号”0″と”1″になる確率になります。 ビット誤りは判定点から外れた部分なので$P=(1/2)\times(P_0+P_1)$となります。

B

SNRは信号電力と雑音電力の比なので$SNR=\frac{A^2}{\sigma^2}$となります。 そのため、$\sqrt{A^2/(2\sigma^2)}=\sqrt{SNR/2}$となります。

C

BPSK波を$s(t)=A\cos(2\pi f_ct+\theta (t))$でガウス雑音$n(t)=n_x(t)cos 2\pi f_ct+n_y(t)\sin 2\pi f_ct$が重畳されているとします。 同期検波するとベースバンドのみが残り、$A\cos\theta (t)+n_x(t)$となります。

ガウス雑音の2つの成分は同程度なので、ベースバンドの信号でのSNRは搬送は周波数帯でのCNRと比べてノイズが3dB下がるので3dB高い値となります。

以上から答えは1です。

R.3.7 無線工学A(1回目) A-14

出典:公益財団法人 日本無線協会 第一級陸上無線技術士 R3年7月1回目 無線工学A A-14

雑音温度に関する問題です。

受信機等で発生する熱雑音を温度に換算した温度が等価雑音温度です。

A

雑音指数$NF$の定義は \[ NF=\frac{P_I/N_I}{P_O/N_O} \] です。 ここでPは入出電力、Nは雑音電力で添え字のIは入力、Oは出力を表します。

利得$G$は$G=P_O/P_I$、入力雑音は熱雑音として$N_I=kTB$なので、雑音指数は次のようになります。 \[ NF=\frac{N_O}{GkTB} \] $k$はボルツマン定数、$T$は温度、$B$は帯域幅です。

増幅回路での雑音は入力雑音$N_I$と増幅回路で発生する熱雑音$N_R$の和が増幅回路で増幅された値になります。 そのため、 \[ N_O=GN_I+GN_R=GkT_oB+GkT_iB \] となります。

以上から増幅回路の雑音指数は \[ NF=\frac{N_O}{GkT_oB}=1+\frac{T_i}{T_o} \] となるので \[ T_i=T_o(NF-1) \] となります。

そのため、Aには$T_i=T_o(NF-1)$が入ります。

B

損失$L$の損失回路では入力信号は同じ比率で減衰して、雑音は入出力で同様に発生するので$N_I=N_O$となります。 そのため雑音指数$NF$は \[ NF=\frac{P_I}{P_O}=L \] となります。

増幅回路と同様の議論で、$T_i=T_o(L-1)$となるのでBに入るのは$T_i=T_o(L-1)$です。

C

増幅器をカスケード接続すると等価入力雑音温度は \[ T_i=T_1+\frac{T_2}{G_1}+\frac{T_3}{G_1G_2}+\cdots \] となり、減衰器では \[ T_i=T_1+L_1T_2+L_1L_2T_3+\cdots \] となります。

増幅器と減衰器は別々に考えていいので \[ T_i=T_{L1}+T_{G1}+T_{L2}/G1+T_{G2}L_2/G_1 \] となり、Cにはこれが入ります。

以上から答えは2です。

R.3.7 無線工学A(1回目) A-15

出典:公益財団法人 日本無線協会 第一級陸上無線技術士 R3年7月1回目 無線工学A A-15

FM受信機の雑音抑圧感度の測定に関する問題です。

FM受信機は利得が大きいので、信号入力がないと大きい雑音が出力されます。 信号を入力することでこの雑音が抑圧できます。 規定値だけこの雑音が抑圧される無変調波の入力レベルで雑音抑圧感度が規定されます。 一般にこの規定値は20dBが使われています。

A

まず、測定するFM受信機の復調出力を丁度いい値にします。 そのため、Aには受信機が入ります。

B

上記の説明の通り、無変調の信号入力を使うのでBには無変調が入ります。

C

終端されている場合、終端抵抗と出力抵抗が直列に接続されているので、開放端電圧に比べて電圧が小さく測定されます。 インピーダンス整合が取れている場合、電圧が開放端電圧の1/2になるので、SG測定値に比べて6dB低く測定されます。

以上から答えは3です。

まとめ

今回は先日行われた令和3年7月1回目の1陸技の無線工学AのA-11~15を解いてみました。 過去問が多く出題される1陸技の試験ですが、ここ最近は1回の試験で2回分の過去問が出るので過去問もはかどりますね。 次の試験を目指すならこの時期からであれば次の試験まで十分に時間が取れます。 1陸技を目指す方は頑張っていきましょう。

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参考文献

電磁気学をちゃんと学びたい人向け

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