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無線従事者のための物理学-電位-

今回は電位について記載する。1陸技の参考書だと電界中の電位が持つエネルギーですと淡泊に書かれていることが多い。もう少し丁寧に説明をしてみたいと思う。

前回の予告でコンデンサについても書くと書いていたが、Maxwell方程式の残りの2本(Ampereの法則とFaradayの法則)を使って、定性的なダイポールアンテナの話に持っていきたいので別途まとめたいと思う。

この記事で扱う事

 電位

電界中の電荷のエネルギーと言ってしまえばそれで終わりなのだがもう少し丁寧に計算する。

電場\vec{E}中に電荷qがあるとして、これを超ゆっくり動かそう。超ゆっくりと言っているのは電荷の運動に伴って磁場や電磁波が発生しないようにという意味である。

このように動かすとき電荷qにかかる力\vec{F}=q\vec{E}に釣り合うように同じだけ逆方向に力をかける。微小変位d\vec{s}動かすのに必要な仕事dWは以下のように表せる。

dW=\vec{F}\cdot d\vec{s}=q\vec{E}d\cdot\vec{s}

点A(\vec{r}_A)から点B(\vec{r}_B)に経路Cに沿って動かす仕事W

W=q\int^B_{A,C}\vec{E}\cdot d\vec{s}

この積分はCに沿って\vec{F}を足し上げる線積分という。

実際計算してみると一様電界\vec{E}の下ではW=q\vec{E}\cdot (\vec{r}_A-\vec{r}_B)となる。

原点にある点電荷Qが作る電界の時は以下のようになる。

位置\vec{r}での電界は\vec{E}(\vec{r})=\frac{Q}{4\pi \epsilon_0}\frac{\vec{r}}{r^3}である。経路C上の微小ベクトルd\vec{s}変位したとすると

\vec{E}(\vec{r})\cdot d\vec{s}=\frac{Q}{4\pi \epsilon_0}\frac{\vec{r}\cdot d\vec{s}}{r^3}

\vec{r}\cdot d\vec{s}=rds\cos\theta=rdrdr=ds\cos\theta\vec{r}方向の微小な長さである。

\int^B_{A,C}\vec{E}\cdot d\vec{s}=\frac{Q}{4\pi \epsilon_0}\int^{r_B}_{r_A}=\frac{Q}{4\pi \epsilon}(\frac{1}{r_A}-\frac{1}{r_B})

上の2例を見てもわかるようにAとBの位置だけできまり、経路によらず同じ値になる。

この式で基準Bが無限遠点にあるとすると\frac{1}{r_B}=0となる。

無限遠点を基準として\phi(\vec{r})=\frac{Q}{4\pi \epsilon}\frac{1}{r}と書くと

\int^B_{A,C}\vec{E}\cdot d\vec{s}=\phi(\vec{r}_A)-\phi(\vec{r}_B)\ \ \ \ \ (1)

となる。これを電位または静電ポテンシャルという。

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図1 各点の位置関係

電位から電界を求める

(1)式 において\vec{r}_A=\vec{r},\vec{r}_B=\vec{r}+d\vec{s}として2点が微小ベクトルd\vec{s}だけ離れた位置にあるとしてd\phi(\vec{r}) \equiv \phi(\vec{r}+d\vec{s})-\phi(\vec{r})とおくと

\vec{E}\cdot d\vec{s}=-d\phi(\vec{r})となる。

前章のdrを使うとE(\vec{r})=-\frac{d\phi(\vec{r})}{dr}となる。

まとめ

今回は真面目に仕事を考えて電位を導出した。

間違い・コメント等あれば指摘していただければ幸いである。

参考文献

今回の出題範囲


電磁気学をちゃんと学びたい人向け


上の難易度が高い人


次回予告

次回はAmpereの法則について解説しようと思う。

前回

無線従事者のための物理学-Gaussの法則の微分形の導出-
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次回

無線従事者のための物理学-Ampereの法則とBiot–Savartの法則-
今回はアンペア(Ampere、アンペール)の法則とビオ・サバ―ルの法則について扱います。(記事内では無線従事者使われる呼び方に準拠してアンペアの法則、ビオ・サバ―ルの法則と記載する。)アンペアは電流の単位のアンペアの由来となった人物です。 ...

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無線従事者のための物理学-本シリーズの立ち位置と今後の方針-
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