無線従事者試験は受験資格が設定されていないという性質上、いろいろな人が受験するため、無線工学の科目で出てくる数学に苦労した人も多いのではないかと思う。
今回と次回くらいに分けて数学的な道具立てを細かい所には深入りせずに紹介していきたいと思う。今回は初等関数などを中心にどのレベルでも知っておいた方がいい内容を次回はベクトル解析など上級資格でもほとんど使わないが、出てくる公式を考えるためには必須の内容を扱おうと思う。
この記事を読むことによって無線従事者試験で使う最低限の数学の概要をつかむことができると思う。
中学校で習うようなことも多いので適宜読み飛ばしていただければ幸いである。
数の分類
数の分類は下図のように区分される。
\[
複素数:a+jb(a,bは実数)
\begin{cases}
実数
\begin{cases}
有理数
\smash[t]{
\begin{cases}
整数
\smash[t]{
\begin{cases}
正の整数(自然数):1,2,3\\
0\\
負の整数 :-1,-2,-3
\end{cases}
}
\\
整数でない有理数 :\frac{1}{2},\frac{1}{3}
\smash[b]{
\begin{cases}
有限小数: 0.1,0.12 \\
循環小数 :0.123123\cdots
\end{cases}}
\end{cases}}
\\
無理数:\pi,\log_{10}{3},\sqrt{2}
\end{cases}
\\
虚数(2乗すると負の値になる)
\end{cases}
\]
義務教育では自然数から順番に世界を広げていったことを思い出す人も多いのではないだろうか。ここではjを虚数単位とする。
数はこんな風に分類されるよくらいに思っていただければよい。
無線従事者試験の計算問題では無理数を計算に使う場合、問題文中にこれはこの値とすると数字は出てくるので覚える必要はないが軽く検算するために代表的なものは覚えておくとよいだろう。
\[
\pi\simeq 3.141 \\
\pi^2 \simeq 9.86 \simeq 10 \\
\log_{10}{2}\simeq 0.301 \\
\log_{10}{3}\simeq 0.477 \\
\sqrt{2}\simeq 1.141 \\
\sqrt{3}\simeq 1.732
\]
指数と対数
指数
指数は\(x^n\)のような格好で書かれる。定義としては\(x\)を\(n\)回掛けた値だが複素数に拡張できる。指数の性質をざっと挙げておく。
\[ x^n\times x^m=x^{n+m} \\ x^n\div x^m=x^{n-m} \\ \frac{1}{x^n}=x^{-n} \\ x^0=1 \]
\(x\)は底と呼ばれており、指数関数としてよく使われるのは\(e^{x}\)の形で表される。\(e\)はネイピア数と呼ばれる無理数で、この数字を底とすると何がおいしいかというと微分や積分したときに形が変わらないことである。
対数とデシベル
\(10^y=x\)の関係が成立するとき、\(y=\log_{10}x\)で表される。これを対数関数という。
対数の性質をざっと挙げておく。
\[
\log_{10}(ab)=\log_{10}a+\log_{10}b \\
\log_{10}(\frac{a}{b})=\log_{10}a-\log_{10}b \\
\log_{10}a^n=n\log_{10}a
\]
対数の何がおいしいかというと対数を取ることによって掛け算を足し算で表せることである。logの下についているものを指数関数同様底といい、10と\(e\)がよく使われる。それぞれ常用対数と自然対数と呼ばれる。常用対数は慣習的に底が省略されることが多い。これに対応して自然対数を\(\ln \)と表現することも多い。
関連してデシベルについて触れておこう。
デシベルの定義は電力比$$G_P=10\log x$$電圧比$$G_V=20\log x$$である。
電圧比の係数が20であるのは\(P=\frac{V^2}{R}\)に起因するものだと思ってもらえればいい。
上では明確に書いていないが、指数関数の引数は比(無次元量)が使われる。定義通りデシベルも比を表すものである。
無線回路では各回路ブロック内で信号が\(G\)倍に増幅されたり、\(1/L\)になったりと入力に対して何かしらを掛け算した結果が出力されることが多い。入力に対して各回路ブロックを通るごとに掛け算していては面倒臭いが、対数を使うことにより足し算というより簡単な演算で済む。デシベルという一見面倒臭そうな概念を導入するのはこのような理由からである。
三角関数
三角関数はおなじみに\(\sin x\), \(\cos x\),\(\tan x\)のことである。三角関数については重要な公式がありすぎてここに書いていると足りなさそうである。
(\sin x), (\cos x)のグラフは正弦波を表す。この形は波の基本的な形で、これらの関数を使うことですべての波を表現することができる。
ビジュアル的に見やすいサイトがあったのでリンクを張っておく。
電波も波なので、これらの関数を使って表現することができる。これについては近いうちに電磁波の導出で触れていきたいと思う。(Maxwell方程式を変形していくと、三角関数を使って解を表せる方程式が導ける。)
まとめ
今回は数の分類と初等関数について紹介した。三角関数については書きたいことが多すぎてうまくまとまってない感じがするのでまた別途リライトするかもしれない。微分方程式とまとめて書いた方がまとまるかもしれない。
参考文献
次回予告
微分積分とできたらベクトル解析まで(ここからは知らなくても試験は受かる気がする)
前回
次回
近日中
本シリーズについて
勉強法
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