前回はマクスウェル方程式を変形すると電界と磁界から電磁波ができることが示しました。 今回は自由空間での電磁波の振る舞いについて解説します。
自由空間の特性インピーダンス
自由空間とは物質がなにもない理想的な空間のことを言います。 なにもない空間なので電磁波の性質だけをしっかり考えることができます。
自由空間の特性インピーダンス
自由空間での特性インピーダンスを考えましょう。
特性インピーダンスはエネルギーが伝搬するときに媒体中で発生する電圧と電流の比です。 回路では電圧と電流の比で表せますが、電磁波の場合は電界と磁界の比で表せます。 電界と磁界の比になる理由については単位を考えてみるとわかりやすいと思います。 インピーダンスは抵抗と同じ(Ω=V/Aの次元になります。 一方電界と磁界の次元はそれぞれV/mとA/mです。 比を取ると回路のインピーダンスと同じ次元になります。
電界と磁界の単位体積あたりのエネルギーは次のように表せます。 UE=12ϵ0E2UH=12μ0H2 これらはコンデンサやコイルの蓄えるエネルギーを考えると求めることができます。
電磁波では電界と磁界のエネルギーが等しくなるのでUE=UHが成立します。 すると 12ϵ0E2=12μ0H2となります。 特性インピーダンスは Z0=EH=√μ0ϵ0≃120π≃377[Ω] です。
自由空間での伝搬損失
自由空間での伝搬損失を考えましょう。 自由空間では障害物や電離層と言った電磁波の伝搬に影響を与えるものがありません。 まず何もない状態を知った上で、障害物や電離層を考えると理解が早いと思います。
自由空間上の1点に等方的に電波を放射する(利得0dBi)のアンテナTがあるとしましょう。 このアンテナを中心に電波は球状に伝搬していきます。 距離d[m]のところに受信用のアンテナRを置いて電波を受信します。 Tからは等方的に電波が伝搬します。 d[m]離れた地点では半径dの球の表面全体に送信電力が分散しているはずです。 このためd[m]先のRでは単位面積当たりの電力は4πd2に減衰しているはずです。
TとRのアンテナをそれぞれGT,GR(真数)の利得を持つアンテナに変えてみましょう。 送信電力をPTとするとTから放射され、Rに届く単位面積あたりの電力は 14πd2GTPT となります。 Rで受信できる電力はRに届く電力にアンテナの実効面積をかければ求められます。 アンテナの実効面積ARはAR=λ24πGRで表せるので、受信電力PRは次のように表せます。 PR=(λ4πd)2GTGRPT
この式はフリスの伝達公式としてご存じの方も多いと思います。 フリスの伝達公式は自由空間を前提としていますが、障害物のないところでは良い近似で成り立ちます。
参考文献
電磁気学をちゃんと学びたい人向け
上の難易度が高い人
次回予告
電波伝搬の一般的な性質を解説したいと思います。
前回

次回
近日中
本シリーズについて
勉強法
コメント