本ページはプロモーションが含まれています

無線従事者のための物理学-Faradayの法則-


今回はFaradayの法則(ファラデーの法則)について扱う。アンペアの法則では電流から磁界が作られることを見てきました。ファラデーの法則は逆に磁界から電流が作られるという法則です。

この法則と以前まで扱ったガウスの法則、アンペアの法則を合わせてマクスウェル方程式の4本の式が理解できます。

スポンサーリンク

導入

第一級陸上無線技術士で「無線工学の基礎」の参考書を見ると大抵N回巻きのコイルに時間\(dt\)で磁束を\(d\Phi\)変化させたときの誘導起電力\(e\)は $$ e=-N\frac{d\Phi}{dt} $$ と書かれて終わりであることが多いと思います。 この式が言っていることは以下をまとめたと思ってください。
  • 閉曲線を貫く磁束が時間変化すればその時間変化の割合に比例した起電力が発生し、比例係数は1である(比例係数については今回は深追いしない)
  • その起電力は磁束の変化を打ち消す方向に発生する(レンツの法則
  • N回巻きのコイルはN個の閉曲線を直列につないだとみなせるのでN回巻きならN倍される
ここで磁束は磁束密度を面積分した値\(\Phi=\int_SB_ndS=\int_S \vec{B}\cdot \vec{n}dS\)です。 この式は電流が磁界を作ることをファラデーが知って、逆も起きるのではないかという着想のもと実験で得た式です。

もうちょっと詳しく

「無線工学の基礎」の範囲内なら上記で充分であるが、「無線工学B」の最初にマクスウェル方程式がボンと出てくるので全く知らない人は面食らうのではないかと思います。そこの橋渡しは一回ちゃんと取りたいと思いますが、ここではその下準備でこの法則を一般化しておきます。 閉曲線\(C_0\)に発生する起電力\(e\)は電界\(\vec{E}\)を\(C_0\)上で線積分した値なので $$ e=\int_{C_0}E\cdot d\vec{s} $$ 一方、\(C_0\)に囲まれる局面Sを固定しておくと $$ \frac{d\Phi}{dt}=\int_S\frac{\partial \vec{B}}{\partial t}\cdot \vec{n}dS $$ となります。 以上から $$ \int_{C_0}E\cdot d\vec{s}=-\int_S\frac{\partial \vec{B}}{\partial t}\cdot \vec{n}dS $$ が成り立ちます。 左辺にストークスの定理を使うと $$ \int_{C_0}E\cdot d\vec{s}=\int_S\vec{\nabla}\times \vec{E}\cdot \vec{n}dS $$ となるので合わせると $$ \int_S(\vec{\nabla}\times \vec{E}+\frac{\partial \vec{B}}{\partial t})\cdot \vec{n}dS=0 $$ となります。 この式が成り立つためには $$ \vec{\nabla}\times \vec{E}+\frac{\partial \vec{B}}{\partial t}=0 $$ となります。 これをFaradayの法則の微分形といいます。

まとめ

今回はファラデーの法則とその一般化を行った。「無線工学B」と「無線工学の基礎」の参考書を眺めていると同じ試験の別科目なのに内容のギャップが激しいのでもう少し深掘りが必要なように思った。次回からは数学的な道具立てをまとめてから「無線工学の基礎」の電気物理の内容と「無線工学B」で出てくるようなマクスウェル方程式の間を埋めていきたい。

参考文献

今回の出題範囲


電磁気学をちゃんと学びたい人向け


上の難易度が高い人


次回予告

必要と思われる数学をまとめます。

前回

無線従事者のための物理学-Lorentz力-
今回はLorentz力(ローレンツ力)について扱う。この力は電磁界から荷電粒子が受ける力である。電界から受ける力はすでに見てきた通りで、電界と電荷の積で書ける。磁界についても磁界から電流が受ける力を考えればすぐに導ける。 この記事で扱う事 ...

次回

近日中

本シリーズについて

無線従事者のための物理学-本シリーズの立ち位置と今後の方針-
書き始めの動機 今後不定期で無線従事者資格で扱われる技術的なトピックについての解説記事をシリーズ書いていこうと考えている。 私自身第一級陸上無線技術士を持っているが、この受験の時はかなり苦労した経験がある。合格するだけなら過去問を数年分解け...

勉強法

第一級陸上無線技術士の勉強法とおすすめ参考書
第一級陸上無線技術士を受けようと思ったけど何からどうやって勉強すればいいのか分からない。そんな人も多いのではないでしょうか? 第一級陸上無線技術士に限らず別の無線従事者や技術系の資格を取りたいと思う目的もいろいろだと思います。 無線工学や法...

コメント

タイトルとURLをコピーしました