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【過去問解説】令和3年7月の1陸技試験問題を解いてみた(R3.7 2回目 無線工学B A-1~A-5)

令和3年7月の1陸技の試験2回目の無線工学BのA-1~5の問題について解説します。

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R.3.7 無線工学B(2回目) A-1

出典:公益財団法人 日本無線協会 第一級陸上無線技術士 R3年7月2回目 無線工学B A-1

自由空間内の電波の偏波に関する問題です。 例年、無線工学Bの最初の問題はマクスウェル方程式に関するサービス問題が出題されていますが、一度に2回試験をするようになってからは必ずしもそうではないようです。

偏波は電波の進行方向と垂直な面上での電界の軌跡を表します。 軌跡が円なら円偏波で、直線になっていれば直線偏波です。 感覚的に理解している人も多いかもしれませんが、ここではしっかり計算してみます。

電波の進行方向をz軸方向とすると進行方向に垂直な面上での電界は次のように表せます。 \[ \left( \begin{array}{c} \epsilon (x)\\ \epsilon (y) \end{array} \right) = \left( \begin{array}{c} E_x\cos(\omega t -kz)\\ E_y\cos(\omega t -kz +\phi) \end{array} \right) \]

ここで$\omega=2\pi f$は角周波数、$k=\frac{2\pi}{\lambda}$は波数、$\phi$は位相差です。 $z=0$の面を考えましょう。 $\epsilon(x)=E_x\cos(\omega t -kz)$だから$\cos \omega t=\frac{\epsilon(x)}{E_x}$ \[ \epsilon(y)=E_y\cos(\omega t+\phi)=E_y(\cos \omega t\cos \phi-\sin \omega t \sin \phi) \\ =\frac{E_y}{E_x}\epsilon(x)\cos \phi -E_y\sin \omega t\sin \phi \] だから \[ \sin \omega t =\frac{1}{E_y\sin \phi}(\frac{E_y}{E_x}\cos \phi \epsilon(x)-\epsilon(y)) \] となります。

これを$\cos^2\omega t+\sin^2\omega t=1$に代入して計算すると \[ \frac{\epsilon^2(x)}{E_x^2}-\frac{2\cos\phi}{E_xE_y}\cos\phi+\frac{\epsilon^2(y)}{E_y^2}=\sin^2\phi \] です。

この式に$\phi=\pi/2$を代入すると$\frac{\epsilon^2(x)}{E_x^2}+\frac{\epsilon^2(y)}{E_y^2}=1$なので楕円偏波、$E_x=E_y$なら円偏波となります。 $\phi=0,\pi$を代入して整理すると$\epsilon(y)=\pm \frac{E_y}{E_x}\epsilon(x)$なので、直線偏波となります。

上記を踏まえてそれぞれの空欄を考えましょう。

A

円または楕円偏波になるのは$\phi=\pi/2$のときなので、Aには$\pi/2$が入ります。

B

直線偏波となるのは$\phi=0,\pi$のときでした。 そのため、Bには$\pi$が入ります。

C

軸比$E_x/E_y=\infty$のときは$\epsilon(y)=\pm1$となるので、直線偏波に近づきます。 そのため、Cには直線が入ります。

D

$E_x/E_y=1$のときは上述の通り、円偏波です。 そのため、Dにはが入ります。

以上から答えは2です。

R.3.7 無線工学B(2回目) A-2

出典:公益財団法人 日本無線協会 第一級陸上無線技術士 R3年7月2回目 無線工学B A-2

電波を受信した時の最大電力を計算する問題です。

絶対利得$G$(真数)のアンテナから送信電力$P$[W]の電力を送信した時、自由空間上の距離$d$[m]離れた点で実効面積$A[\rm{m}]$のアンテナで受信した時の最大受信電力$P_r$は \[ P_r=\frac{1}{4\pi d^2}GPA \] です。

等方アンテナから放射された電波は球状に広がりを持って進むので距離$d$の点では単位面積当たり$\frac{1}{4\pi d^2}$に減衰します。 絶対利得は等方アンテナに対する利得なので、$G$倍すればその点での単位面積あたりの減衰量が計算できます。 これに電力と受信アンテナの面積(実効面積)をかければ、最大受信電力になります。

代入すると$P_r=2.5\times10^{-5}$となるので、答えは5です。

R.3.7 無線工学B(2回目) A-3

出典:公益財団法人 日本無線協会 第一級陸上無線技術士 R3年7月2回目 無線工学B A-3

微小ダイポールアンテナの電界強度は$E_1=\sqrt{45P}/d$、半波長ダイポールアンテナの電界強度は$E_2=7\sqrt{P}/d$となります。 計算は近々別でまとめたいと思います。

上記から$E_1/E_2=\sqrt{45}/7=0.958\simeq 0.96$となります。

答えは1です。

R.3.7 無線工学B(2回目) A-4

出典:公益財団法人 日本無線協会 第一級陸上無線技術士 R3年7月2回目 無線工学B A-4

電波の空間分布の性質に関する問題です。

A

フレネル領域ではアンテナから近い距離にある領域です。 この領域ではアンテナの大きさや形が無視できず、アンテナの中心から放射された電波とアンテナの端から放射された電波が互いに干渉する領域です。 アンテナからの距離によって経路差が変わるので距離によって電界強度が変化します。

そのため、Aには「変化し」が入ります。

B

フラウンホーファ領域はアンテナから遠い点にある領域です。 この領域では伝搬距離に対してアンテナの大きさが無視できるため、電波としては球面波兎して扱えます。 この領域では電界分布は距離によってほとんど変化しません。

そのため、Bには「ほとんど変化しない」が入ります。

C

フレネル領域とフラウンホーファ領域の境界は明確にはありません。 おおよそアンテナ中心とアンテナ端との経路差が$\lambda/16$程度になる距離を使用します。

経路差が$\lambda/16$となる条件は \[ \sqrt{R^2+(D/2)^2}-R=\lambda/16 \] となり、計算すると$R=2D^2/\lambda$です。

以上から、答えは3です。

R.3.7 無線工学B(2回目) A-5

出典:公益財団法人 日本無線協会 第一級陸上無線技術士 R3年7月2回目 無線工学B A-5

微小ダイポールアンテナの実効面積に関する問題です。

A

利得が最大電力を取り出せる方向で定義されるので、実効面積でも最大電力を取り出せる方向で定義されます。

そのためAには最大電力が入ります。

B

実効面積は$A_e=\frac{\lambda^2}{4\pi}G_a=0.08\lambda^2G_a$で表されます、

そのため、Bには$0.08\lambda^2G_a$が入ります。

C

微小ダイポールアンテナの絶対利得(真数)は1.5なので$A_s=0.12\lambda^2$となります。

以上から答えは4です。

まとめ

今回は先日行われた令和3年7月2回目の1陸技の無線工学BのA-1~5を解いてみました。 過去問が多く出題される1陸技の試験ですが、ここ最近は1回の試験で2回分の過去問が出るので過去問もはかどりますね。 次の試験を目指すならこの時期からであれば次の試験まで十分に時間が取れます。 1陸技を目指す方は頑張っていきましょう。

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参考文献

電磁気学をちゃんと学びたい人向け

上の難易度が高い人

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