令和3年7月の1陸技の試験2回目の無線工学AのA-6~10の問題について解説します。
R.3.12 無線工学 A-6
Pチャネル接合形電界効果トランジスタに関する問題です。
A
電界効果トランジスタではドレインとソースは構造的に等価です。
ドレイン電流は図の方向に電流を流すのが一般的なのでソースがドレインより高い電圧をかけます。
そのため、Aには「Dに負(-)、Sに正(+)」が入ります。
B
Pチャネル接合形FETではn型半導体のゲートの電圧でP型半導体のソース、ドレイン間のPN接合の空乏層を制御します。
ドレイン電流$I_D$の変化とゲート-ソース間電圧の変化の比が相互コンダクタンスです。
そのため、Bは$g_m=\Delta I_D/\Delta V_{GS}$です。
C
$V_{GS}=0[\rm{V}]$の時はドレイン-ソース間はただの半導体なので$I_D$は流れます。
以上から答えは3です。
R.3.12 無線工学 A-7
各種ダイオードの特徴に関する問題です。
誤っている選択肢は3です。
どれもしれっと正しそうな内容となっているので気をつけて選びましょう。
3は可変容量ダイオードに関する説明文です。
可変容量ダイオードはPN接合に加える電圧によって空乏層を変化させることで2つの端子間がコンデンサのように働きます。
この時、空乏層は接合容量ではなく絶縁体(誘電体)として働きます。
そのため、答えは3です。
R.3.12 無線工学 A-8
オペアンプを使った反転電圧増幅回路に関する問題です。
理想オペアンプの反転増幅回路の電圧利得は$R_1$と$R_2$の比$R_2/R_1$になります。
電圧利得が34dBなので
\[
20\log \frac{R_2}{R_1}=34 \\
\log \frac{R_2}{R_1}=1.7(=2.0-0.3) \\
\log \frac{R_2}{R_1}=\log \frac{100}{2}
\]
です。
$R_1$と$R_2$の比は$R_1:R_2=1:50$なので、これに当てはまる選択肢は1となります。
そのため、答えは1です。
ここでは真面目に計算しておきましょう。
入力電圧を$V_{IN}$、出力電圧を$V_{OUT}$、オペアンプの2つの入力端子電圧を$V_{+},V_{-}$、オペアンプの利得を$A$とすると次のようになります。
オペアンプの2つの入力端子はバーチャルショートで等電位になるので
\[
V_{-}=V_{IN}+\frac{R_1}{R_1+R_2}(V_{OUT}-V_{IN}) \\
V_{+}=0
\]
と表せます。
オペアンプの出力は$V_{OUT}=A(V_+-V_-)$なので、
\[
V_{OUT}=-\frac{R_2/R_1}{1+\frac{R_1+R_2}{AR_1}}\rightarrow -\frac{R_2}{R_1}V_{IN}
\]
となります。
R.3.12 無線工学 A-9
微分回路に関する問題です。
A
AとBはどちらかが分かればこの2つの空欄が決まります
この回路は微分回路です。
Lを通してグランドにつながっているので、この回路はハイパスフィルタのような動作をします。
電圧の変化が少ないほど出力電圧が大きくなります。
B
パルス電圧を入力すると電圧が一定の部分が0になります。
これは微分回路の特徴です。
波形は(c)になります。
C
微分回路をコンデンサで作ると(d)になります。
以上から答えは1です。
R.3.12 無線工学 A-10
論理回路とブール代数に関する問題です。
それぞれの選択肢について計算してみましょう。
1と2は図のままです。
1
\[
X=A+(B\cdot C)
\]
となるので正しい選択肢です。
2
\[
X=A\cdot (B+C)
\]
となるので正しい選択肢です。
3
\[
X=A\cdot B+(A+C)=A(B+1)+C=A+C
\]
となるので、この選択肢が誤りです。
4
\[
X=AB+BC=B(A+C)
\]
となるので正しい選択肢です。
以上から答えは3です。
まとめ
最近、難化傾向と言われる1アマの問題を解いてみました。
1陸技と比べると基本的な問題が出ますが、たしかに私が受けた10年前より難しくなっている気もします。
そろそろアマチュア無線家としても復活していきたいところです。
参考文献
電磁気学をちゃんと学びたい人向け
上の難易度が高い人
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